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いつもと変わらない今日という日、とつぜん起こった“うさぎ脱走事件”  『学校ウサギをつかまえろ』

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「逃げ出したうさぎをつかまえる」手っ取り早く言うとそれだけのストーリーです。ファンタジー作品がほとんどの作者ですが、これは異例だと思う。カワイイサスペンスとでもいいましょうか。
学校から逃げ出したうさぎは工事現場に潜伏します。それをつかまえるのは主人公の少年をふくむクラスメイトたち。しかし、行きがかり上そろった顔ぶれは、けして普段から中のいい友達たちではない。ほとんど口をきいたことのない無口な女の子や、塾通いを優先する優等生――そしてみんなの背後には、それぞれの家庭の事情や家族が見え隠れする。一つの目的に力を合わせて取り組むうちに、彼らは次第にお互いのこと、自分自身のことに向き合うことになります。意外と強かったあいつ、情けないと思った自分、見直したところ、がんばれたところ。ストーリーは単純なのに、その過程が断然面白い。唯一出てくる“大人”である工事現場のお兄さんは、自分たちの側にいる大人とどこかちょっと違う。あくまでも主人公目線で話は進みますが、誰をテーマにとっても感想はかける。自分の側にいる友達たち、あるいは自分自身を投影することで、いろんな気持ちが想像できるはずです。
この本は大人が読んでもじゅうぶん面白い。平穏な日常の中に投じられた“一羽のうさぎ”に、不測の事態が起こった時の人の思い、団結力の大切さなんかも感じることができます。騒ぎが解決し、子供たちがもどっていく日常は、もうそれまでの日常ではないはず。ホッとして、爽やかな読後感を残す、楽しい本です。
主婦、ペンネーム 『夏美』